こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
65回目の今回はIPO資金調達額と会計基準
についてお伝えしたいと思います。
今週、以下のような記事がありました。
<日本のIPOシェア低下 調達額、アジアで5%未満>
日経電子版
要約すると・・・、
・アジアの新規株式公開(IPO)で日本市場
の存在感が低下している
・アジア全体の資金調達額におけるシェアは
5%未満と、2000年の3割強から大幅縮小
・未上場企業への資金供給や日本特有の公開
価格の決定プロセスが課題として浮かび上が
っている
・企業の新陳代謝を促すにもIPO市場活性化
は不可欠で政府も解決に向けて議論を始めた
というもの。
IPO(新規株式公開)は未上場の株式会社が
証券市場に上場することにより、一般の投資
家から広く資金調達をするものです。
そのため、上記記事のようにIPOでの資金調
達におけるシェア(金額)が縮小していると
いうことは、
日本の新規に株式を公開した会社が集められ
る資金が減少している、ということを意味し
ます。
最もシェアが大きいのは香港で4割、中国本
土が3割と続き、日本は韓国やインドよりも
下とのことです。
資金調達額が小さいと将来有望な企業がス
ムーズに資金調達が出来なくなり、結果とし
て国の損失となる可能性があります。
もちろん、日本に将来有望な企業が少ないか
ら資金調達額が小さい、という可能性もあり
ますが、
上記記事によると、資金調達額が小さい要因
としては以下の理由があるようです。
①IPO予備軍の育成につながる未上場企業へ
の投資規模の小ささ
②IPO公開価格が低くなりがちとも言われる
日本のIPOプロセス
①については、IPOをする前の育成段階の企
業に対して、VC(ベンチャーキャピタル)か
らの投資額が小さい、ということです。
すなわち、IPOをするような企業を育てるVC
からの投資自体がそもそも小さいため、
IPOをするような企業がうまく育っていない、
ということです。
記事においては、その理由として日本のVCが
国際標準の会計基準を採用するVCが少ないた
め、
海外の投資家が日本のVCに投資しづらい、と
いう要因を挙げています。
本ブログでも何度かお伝えしていますが、
日本の上場企業については、収益認識基準や
リース基準が
国際標準の会計基準(IFRSと考えて良いと思
います)とほぼ同等の基準となることから、
上場後の資金調達についてこのような問題は
解消して行くと考えられます。
しかし、上場しているVCはほとんどないため、
VCでも会計基準をIFRS等にすることにより、
資金を調達しやすくなると考えられます。
また、②については日本の市場においてはブ
ックビルディング方式という方式で、株式公
開前に株式公開価格が決定されます。
IPO企業にとっては公開価格が資金調達額と
なるのですが、公開後の初値は公開価格より
かなり高い価格になることが多く、
結果として資金調達額減少の要因となってい
ます。
(公開価格を初値に近い価格にしておけば、
IPO企業の資金調達額はより多額になってい
たということです。)
記事にもありますが、各国の取引所は国境を
超えた有力スタートアップの誘致に注力して
いるため、
日本もこれらの課題を急ぐ必要があると言え
ます。
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