こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
53回目の今回は、以前このブログでもお伝
えしましたが、いよいよ強制適用が目前に迫
った新収益認識基準についてお伝えします。
以前もお伝えした通り、新収益認識基準は20
21年4月以降、上場会社で強制適用になりま
す。
今回は当該基準の中でも実務上、論点となり
やすい点をお伝えします。
2020年3月13日のブログで以下の点をお伝
えしました。
・新しい収益認識基準が作成され、2021年4
月以降に始まる事業年度において、上場会社
で強制適用となること
・今後は非上場の会社でも適用されることが
予想されること
・新収益認識基準は
①契約の識別
②履行義務の識別
③取引価格の算定
④履行義務の取引価格への配分
⑤履行義務の充足による収益の認識
の5つのステップで収益を認識するというこ
と
上記のステップの中で、実務上論点となりや
すい点の一つとして②履行義務の識別方法が
あります。
「収益はどの単位で判定するのか?」この疑
問に関して会計基準では,「履行義務」とい
う考え方を採用しています。
1つの契約に複数の履行義務が含まれるなら,
それぞれの履行義務の単位で判定しましょう
という考え方です。
そうなると、履行義務の判定によって収益を
認識するタイミングが変わる可能性があるの
で,会計基準では判定にあたっていくつかの
要件を定めています。
履行義務は、以下の二つの要件を満たすこと
で「履行義務がある」と判断されます。
①「単独で顧客が便益を享受するこ
とができること
②契約に含まれる他の約束と区分して識別で
きること
表現が堅苦しいですが、簡単に言うと
①単独で儲けが出ること
②他の取引と区別出来ること
と言ったイメージです。
2020年3月13日のメルマガでは、機械を販売
し、販売と同時にその機械の据付工事を行う
場合に、
据付工事は機械の販売とは区別された履行義
務となり、別個に売上計上が必要となる場合
が考えられるとお伝えしました。
では、以下のような場合はいかがでしょう。
A 社(建設会社)は、大規模ビルを建設する
契約を顧客と締結し、A 社はプロジェクトの
全般的な管理に対する責任を負っている。
当該契約には、建設の他に設計、現場の清掃、
基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の
据付け及び仕上げが含まれる。
先述の機械の販売と据付工事と同様に考える
と、ビルの販売と現場の清掃や設備の据付等
は別個に売上を認識する必要があるようにも
感じます。
しかし、実はそうはならず、同じ取引として
収益認識を行うことになります。
新収益認識基準およびその適用指針には
「提供した財又はサービスの束に統合する重
要なサービスを提供している場合」を契約を
区分して識別することが出来ない要因
として例示しており(企業会計基準適用指針
第30 号 収益認識に関する会計基準の適用指
針 6項(1))、
上記大規模ビル建設におけるA社の「プロジ
ェクトの全般的な管理」はこの要因に該当す
ることとなります。
そのため、A社はそれぞれの役務提供を別個
に売上計上するのではなく、1つの契約とし
て収益認識することになるのです。
このように、一つの契約の中に複数の履行義
務が存在する場合でも、必ずしも区別して収
益を認識をするわけではない
ということを覚えておいて頂ければと思いま
す。
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